認知神経科学とリベラルアーツの視点から - from the viewpoint of cognitive neuroscience and liberal arts

山岸典子 Noriko Yamagishi: 認知神経科学者として伝えたいこと

感謝で明るく: 感謝を伝える旅 Gratitude Journey

 

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                                                                                                            床 2020 夏 Kyoto, Japan

この激動する社会を生き抜く力をつけることを目標として、人生のデザインの中で軸となる考えを確認し、それに「感謝」を基本とした生き方を、講義とプロジェクトを通じて身につけてもらいたいと思い、「感謝」感情の科学というゼミナールを大学で始めました。その中から、ぜひ皆さんにも知ってももらえたらいいなと思うことをこのブログでお伝えします。

感謝の旅

今回はGratitude Journey (「感謝の旅」)を一緒に考えます。次のTEDトークは、アメリカのジャーナリストで作家のAJ Jacobsさんのものです。朝の一杯のコーヒーが自分に届くまでに関わるみんなに「Thank you」(ありがとう)カードを渡しに行く、という旅の話です。きっかけは、食事の前のお祈りをしている時、小さな子どもさんに「ここでいくら感謝の気持ちを言っても誰にも聞こえないよね」と言われたことだったそうです。14分の素晴らしいトークですのご、ご紹介させていただきます。

 


My journey to thank all the people responsible for my morning coffee | A.J. Jacobs

感謝の旅プロジェクト2019年

さてゼミナールでは、3-4人のグループを作り、グループごとにGratitude Journey (「感謝の旅」)を始めてもらいます。2週間後にグループ発表です。学生さんたちが選んだテーマは千差万別、私の予想をはるかに超えて、みんなイキイキと本当に旅に出てくれます。こんなに今の大学生って積極的だったのですね。2019年は「生協食堂のカレー」、「図書館の本たち」、「学校のコピー機」、「駅 - 感謝は続くよどこまでも」などなど。手作りの「ありがとう」カードも表彰状みたいなものから、かわいらしい絵のついたカードまで。そして、分析が素晴らしいのです。Jacobsさんのように、登場する全員にカードを渡しにはいけないのですが、一連のものと人の流れが大河のように描きだされているのです。そして、実際に、何人かにはカードが届けられました。

感謝の旅プロジェクト2020年*

2020年は、コロナ禍であり、様子は一変しました。正直、このプロジェクトができるか心配でした。授業もリアルタイムのオンラインです。しかし、本当に学生さんたちは創造性が高く、行動的です。さて、学生さんたちが選んだテーマは、「映画やアニメを視聴できるまで」、「大学の図書館から本が届くまで」、「スポーツ飲料が飲めるまで」などなどです。そして、「ありがとう」カードのお届けは、メールや電話になりました。2020年春学期、すべての授業がオンラインになり、大学は閉鎖されたため、大学は図書宅配サービスを始めました。これが、どんな仕組みになっているのかを調べ、関わる皆さんに「ありがとう」メールが送られました。映画配信会社や、スポーツ飲料のメーカーにもメールをし、それを運ぶ車や、道路標識を描いている会社にまで「ありがとう」のメッセージが届けられました。そして、このように安心していろいろなことができるのは、家族のお陰と、お母さんにも「ありがとう」カードが届けられました。2020年、様子は一変しました。オンラインプロジェクトで「ありがとう」を伝える範囲がとてつもなく広がったと同時に、とても身近な人にも心が伝えられました。

感謝の旅 グループ発表

Gratitude Journey「感謝の旅」は、学生さんにも私にも、毎日自分に起こっていることを改めて考える機会となりました。そして、グループ発表では、「ありがとう」を届けた相手の人から言われた言葉や様子が伝えられました。JRで働いている方からは、福知山線の事故の年、安全を守りたいという思いから入社したという話を、涙とともに聞いたことが伝えられました。また、道路標識を作成している会社からは、長い間この仕事をやっているが、「ありがとう」と言われたのは初めてだといわれたそうです。学期の終わりにアンケートをとったら、「感謝の旅」をもう一度やりたい、という言葉がありました。

 

そう、なんだかみんな、このプロジェクトが好きだったようです。そして、みんなの顔が明るくなったのです。大変なプロジェクトだったと思うのですが、その話をする、みんながイキイキと元気になっていました。

もし、ちょっと「明るくなりたい」と思う時があったら、Gratitude Journey「感謝の旅」をやってみてはどうでしょうか。「ありがとう」カードは手書きでも、メールでもいいのです。それを誰かに届ける旅です。そして、その体験は、また誰かに話してみてください。

まとめ: 「やってみよう」

明るくなるために1

Gratitude Journal「感謝の旅」をやろうと思う

② 対象とする身近なものを一つ選んでみる

③ それがどうやって、自分のところに届くのかを書き出してみる

④ 関係する人(一人でもいい)に、「ありがとう」カード(メッセージ)を送る

⑤ この体験を誰かに話す